ガラスの靴を振りかざして6_緑 (ページ7)

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スケジュール関係の作業もあらかた終わり、次に会社全体で共有している業務アプリを起動させた。

普段はチーフマネージャーの田ノ上さんやぞのっちが代表して管理しているそれにも一応個人アカウントが全社員分振り分けられていて、社員同士、何かあればこちらにメールが届くようになっている。

とはいえ、もし何かあれば田ノ上さん経由か、もしくは社用ケータイに直接連絡が来ることが多く、私のようなまだまだ下っ端のマネージャーにはあまり活用性のないツールだった。
こっちに連絡が来たことなど数える程度しかないものの、一応会社として正式に採用している業務アプリであり、全社員対象に毎日確認するルールにはなっているので、形式上意味もなく起動させているような感じである。

今日も何もありませんように、と心の中で祈りながら開けば、予想に反して新着のメールマークが一件点滅していた。
二度見して、それが人事部からのメールだと分かると思わず三度見する。

人事部なんて、転職する時に数回お世話になった程度で、普段は全く絡みのない部署だ。
そんなところから私個人宛に何の用事があるのか見当もつかず、首を傾げながらメールを開く。

「………わお」

なかなかの文章量で届いていたそれは、件名と冒頭を軽く読んだだけでもあまり良い内容ではないことが分かる。
背後の人の気配を気にしながらひとまずざっと読み、なんとなく内容を理解すると盛大なため息を吐き出した。

ちょっとどころか、最初から最後まで、何一つ良いことが書かれてない。

ノートパソコンを閉じ、テーブルに肘をついて項垂れる。
これは一体全体、どうしたら良いのだろうか。
目の前に突然突きつけられた難題は、ほんの数十分前のナポリタンを食べた幸福感をかき消すには十分過ぎるほどの衝撃があった。
落ち着くべきだと分かってはいても、心と感情が掻き乱される。

もう一度読むべきか。
そう考えていると、タイミングよく社用ケータイが鳴った。
準備中のスタジオ内に人はまばらだが、とりあえず外ようと立ち上がる。
すると近くにいたスタッフさんが気に利かせて近付き「まだ撮影始まらないのでこちらで電話に出て頂いて大丈夫ですよ」と言ってくれたので、会釈をすると椅子に座り電話に出た。

電話の相手は田ノ上さんだった。